2012年04月01日

バットマン・ビギンズとダークナイトと

joker

東村アキコの慧眼が喝破した通り、我々男子はダークナイトが大好きなのであります。やーだって哀しいものジョーカー!女性がみんな圧倒的な性的魅力への畏れを背負っている(決めつけ)ように、男はみんな哀しみという名のロマンを背負っているんですよ。愛、震える愛ってやつですよ。バットマンの圧倒的な財力、カルマ、バックボーンと比較しての、ジョーカーのこの安っぽいメイクったら。銅藍がはげ落ちて、どう見たって虚勢。前科2犯のチンピラの生き様。かーっ!

【こっからネタバレ多め】ダークナイト。ダークナイト。誰のことだこれは。語るべきストーリー、越えるべきトラウマ、聞く耳を向けさせる事のできる財力。そんなもの持たない人間が口にできるのは、でまかせしか無いんですよ。関心を集めるにはイカれるしか無いんですよ。「感動を伝えるのに、『死んでも』とか『命をかけて』とか言うのは、中産階級の人間の特徴。命を持ち出さないと己の平凡さを突破できない」という事を誰かが言ってましたが、まさにそれなんだよなー。だからこそ射抜かれるのです。「俺こそがダーク・ナイトだ」みたいなセリフ、ジョーカー言ってたっけ?言ってないよな多分。そんなセリフ似合わないものな。凡庸な己への圧倒的な否定と肯定。村上隆イズムじゃないかこれ。

で。

そんなダークナイトは以前見てたのですが、今回micci_dの勧めに従い、バットマン・ビギンズ見ました。新生バットマン3部作の第一話。ダークナイトが第二話で、今年公開のダークナイト ライジングが最終話です。監督・脚本はクリストファー・ノーラン。あ、メメントの監督なのか!あとインセプションも。言われてみれば、似てるっちゃぁ似てるのかもな。スゲェ。ナベケン気に入ったんだな。まぁ本作では噛ませだったわけですが。インセプションも最近見たのでそのうち書けたら良いな。あれもすごかった。

バットマン・ビギンズの感想。大 ア メ リ カ 万 歳 !これに尽きる。アジア描写の適当さ。コミック文法を映画文法に切り替え成立させる、強引な腕力。お約束を外さない事への執拗な圧力。初めて人を殺すのかってwww 最初の爆発からその後のラフ運転まで、どう考えても100人は殺してるだろwww白人がなぜか異境で首長はるってのも、アメリカ映画ならでは。そんな都合の良さも含め、これぞアメリカーっ!と思った。「大切なのはトリックと演出」かー。アメコミと映画の橋渡しをするには絶対必要なロジック。素晴らしい。

象徴的なシーンとして、冒頭の親父の完璧さね。ママへのプレゼントを子供に見せて、「どう思う?」ってセリフ。息子を一人前として扱い、人に物を送る喜びを共有する。その事が、自信を失う息子に与えるべきものだってことを理解している父親。死ぬ直前の、「いや、僕が外に出ようといったんだ」というセリフに繋がる、帝王学への伏線。これがまた、「僕が悪いんだ」「そうじゃない。悪いのは犯人だ」への伏線にもなる。すっげーーー。この練りあげられたストーリーの連続性と、一つのセリフの情報量は、本当に本当に凄い。多分原作には無いと思うんだがどうなんだろ。この親父の存在だけで、正統派ヒューマンドラマも書けるんだろなと思える。

お話の作りとしては、ダークナイトと同じ2部構成。ボスと黒幕二段構えの布陣で、ドラクエ3の映画化があったら参考になりそうな感じ。ハンディタイプの幻惑スプレーを、街全体に噴霧しようってスケールアップのさせ方は、前後の山の連続性がある。ドラゴン・タトゥーの女と比較すると、違いが分かりやすいと思う。キャラクターの作りは、ダイの大冒険のヒュンケル×ミストバーンに似てる。ダイ大は子供向け漫画だけど、よーく出来てる。

この原作から映画へのエンコードってのは、ある程度公式化出来るんじゃないかなーと思ったりもしてる。原作の良さを見極めて、その良さのみを維持すべく、主要な出来事を素材に再度調理し直す。良さと出来事の親和性は最高に高いはずなので、難しいことじゃない。良サンプルは蒼天航路、スパイダーマン、バットマン等々。悪サンプルはBECK、ドラゴン・タトゥー、ドラゴンボール等々。ストリートファイターは保留。

ヒーロー物っていうのは、それぞれのカルチャーが持つ「善の価値観」のシュミレーターとして機能していると思う。「大いなる力には大いなる責任が伴う」というスパイダーマンの価値観は筋の通った良い切り口だし、このバットマン3部作の1,2作目で表される、「正義と復讐の違い」「善の激化は悪の激化を伴う」という、アメリカが切り込むからこそ力を持つ価値観(お前が言うな!とも言う)のシュミレーションも、大変興味深い。ヒーローとして立ち上がり、善悪表裏一体に踏み込んだバットマンが提示するゴールはなんなのか。3作目は今年7月公開。日本でも同時公開するのかな?楽しみです。



sarustar at 20:41│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote レビュー 




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