2011年12月12日

七番目の価値観 -たけしとたかしと、ときどきB'z-

takashimurakami2

村上隆×北野武を経由して、着地点は結局B'zです。「またか!」と思う方はスルー推奨。

ということで、ツーアート読みました。村上隆と北野武の対談本。世界のキタノと世界のムラカミ、二人のワールドクラスアーティスト夢の対談なんですが、内容的には完全に北野>村上。これは別に村上隆をディスってるわけではなくて、そもそもそういう本です。村上さんが、憧れの北野さんにお話を聞く、という流れです。

読んだ印象。北野武はアーティスト。この場合アーティストの定義は、創作への欲求が自身の内側、もしくは天から授かった才能から沸き上がるものであるということ。他者、社会は観察対象、攻略対象であり、しぶとい自我がまずある。それに対し村上隆は、フェイクスター。あるのはまず憧れ。アートへの、アートを育んだ白人カルチャーへの、それを支えるタレントと社会への憧れ。自我の暴走を許さない理性がまずある。頭が良ろしいのでしょう。

この村上隆の劣等感にも似た苦悩は、残念ながら僕はよく分かります。分かってしまうと言うべきか。こんなもの知らなくて済むならその方が良かった。自分に世界をねじ伏せる才能が無いことを痛感するのは悲しい事です。しかし、それを知ることが大人への第一歩というのも、また真実。この挫折がなぜか被害者意識を育て、弱者の暴論を大人の理論とすり替え、ダークサイドを歩む人もいます。しかし、才能の勝負ではなく、努力や学習、勤勉といった資質をもって世界と対峙する美しい人も、世界にはたくさんいます。

僕がハリウッドスタイルの、理屈馬鹿なストーリーテリングに惹かれるのは、それが「物語の神に近づこうとする人間の方法論である」と信じているからです。これを信じる才能は、幸い僕にも備わっているようです。蒼天航路の袁紹のような生き方かもしれないし、医龍の霧島軍司のような生き方かもしれない。その両者は残念ながら、意志ある才能の前に敗北を喫するわけですが、それが世の常ではありません。というより、それが世の常でないからこそ、そういう物語が悪魔的な魅力を放つのです。

そういう苦悩をおそらく抱えている村上隆のやり口を、しかし僕は好きにはなれません。彼の憧れるものとその結果作る作品が、あまりにダサいからです。彼は自分の中を探して、2つ突出したものを見つけたのだと思います。まず、西洋アート業界をロジカルに分析把握する事ができ、そこに侵入する手段を算段できる程度の頭の良さ。そして、その西洋アート業界に対する最大限の憧れ。憧れが脆弱な性根と結びついた時、劣等感が生まれます。彼ほど立場を確立した人間ならば、その劣等感を素直に表すことが、もう表現になり得ます。しかし彼はそれを決してしないでしょう。ダサい。歪んだ自尊心のなせる業か、それとも我が身を焦がす劣等感ですら信じられないのか。

で。

B'zはそんな、「どうしようもない憧れ」を抱えたミュージシャンです。横国を出て教員免許を取っておきながらミュージシャンの道を選ばせる程の、どうしようもない「ロックンロール」への憧れ。easy come,easy goのPVを見れば明らかです。ああいうのが大好きなのです。そして彼らは、強烈な自我を持った白人でも虐げられてきた黒人でもなく、平和で豊かで均質な日本に生まれ育ったという、否定しようもない/する必要のない事実も抱えています。丸い刃はなお痛いのです。悪そな奴は大体友達程度じゃ、ひりつくようなリアルヒップホップは生み出せません。マブなダチが2,3人撃たれて死んでくれないとさ。ハクつかないじゃん。

しかしB'zは、そんな日本で生まれ育った自分を凝視し、それでもロックをやろうともがいています。「俺を理解するのは俺一人だ!」と叫ぶ自我も、「誰も信じられない!」と叫ぶ貧困もない。でもだからこそ、「一人じゃないから、奪いながら生きてる!」と叫ぶのです。「願いよ叶え、いつの日か。そうなるように生きて行け」と、馬鹿みたいに楽観的に叫ぶ言葉にそれでも力があるのは、この国が、世界がそういう事を信じていられる場所だと、彼ら自身が信じ、あるいはねがっているからです。

この国に生まれた人間だからこそ叫べる言葉がある。その真理に彼ら自身がたどり着いたのがいつかは分かりませんが、ELEVENというアルバムの中に、まさに決意表明と言えるような歌があると、僕は思っています。それが、「Seventh Heaven」です。 第七の天国。六大陸に属さない、七番目の価値観。それが日本ではないでしょうか。ないでしょうか!「セブンスヘブン ただ歓びなさい」なんて、まさに神の声。「身分の区分忘れ光浴びなさい」ですって。これこそ日本じゃありませんか!せんかっ!!(バンバン

彼らのアメリカ憧れは、時に滑稽ですらあります。MOTELって!見たことねぇよ!がしかし。その曲は確かに力強く、その歌詞は確かに現代をもがき生きる人達に向けられています。最新アルバムC'monで「夢を問われ 答えられないのは罪でしょうか? 何もできず一日が終わるのはダメですか? どんだけ似てるように見えても 昨日と今日は絶対に違う」 そんなこと他に一体誰が言ってくれるというのか。タイトルはデッドエンド、いわゆる袋小路。そんな中で、無理矢理でも面白がれと訴える男たちを無視していいのか。ただのオリコンスターで終わらせて良いのか。良い訳無いのです。本人達が許してもファンが許さないのです。信者は神より怖いのです。

2011年にB'zが出したアルバム「C'mon」のCMは、キャッチーで旬なタレントを起用した、それでいて大変力強いものでした。真紅のドレスに身を包んだ上からマツコを大胆に起用したシンプルな作り。重厚な低音ヴォイスで繰り返されるメッセージがまっすぐに響きます。曰く、「相手してやっから」。なんて直球。背負う気満々じゃないすか。どんだけグレイトなんすか。

ツーアート (光文社知恵の森文庫)
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sarustar at 00:20│Comments(0)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote 思ったこと | 本、マンガ、音楽




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