2011年08月24日

「愛と幻想のファシズム」読んだ

愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)
愛と幻想のファシズム(上) (講談社文庫)
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ブスラジでキーチの話してる時にmicci_dに読めと言われたので、今更ですが読んでみた。面白かったです。確かにキーチ好きなら読むべき作品。特に上巻はぐいぐい引き込まれた。下巻は正直めんどくさくて、ラストへの興味だけで読み進めた。終わってからレビュー漁ってみたんだけど、有名な割りにあまり無いのね。やっぱインターネット以前の小説だからか。見た感じ、amazonのアレンさんのレビューが一番しっくり来た。一部抜粋。
前期作品においてはやはり「ブルー」や「コインロッカー」を引きずっていて、ご本人も自らを「詩人」だと思っていたらしいが、今や「長編作家」であるとし、おベンキョーしては吐き出す大江健三郎的作家になってしまった感がある。
まさにこんな感じ。忘れてたけど俺村上龍基本嫌いだった。半島を出よ、5分後の世界、69読んだだけだけど。物知りで美味いもの好きなのは分かったよ俺どっちもあんま興味ねーんだよと思ってしまう。

読んでて、確かに「キーチ!!」を思い出した。他にも、民主主義を否定する下りでは「沈黙の艦隊」の「人類が手にした最も価値あるものは民主主義です」みたいな台詞を思い出したし、そもそも猟師の時点で「ザ・ワールド・イズ・マイン」を思い出さないと嘘だ。新井英樹ファンとしては、「なんだー元ネタあったのかー」とか思って、ちょっとがっかりしたり、それを書いた村上ドラゴンに嫉妬の感情を覚えたり。新井英樹信者ですから僕。でも、最後まで読んで、嫉妬する必要はねーな、とも思ったんですよね。これはキーチのが上だ、と。上とか下とかじゃ無いんだけど。

もちろん「すげー預言者かよーマジで30年近く前の作品かー」とは思った。と同時に、決定的な古さも感じた。その古さというのは、AKIRAに感じる古さと一緒。インターネット以前な感じ。世界がまだ闇に包まれてて、分からなくて、だからこそ絶対的で、怖い時代。

この時代のテーマっていうのは、たぶん「対立」だったのだと思う。北と南、右と左、国家と国民、文明と原始、企業と労働者、民主主義とファシズム、資本主義と共産主義。こういった分かりやすい対立がまずある。そして、その裏に、そういった分かりやすい対立を仲介する闇がある。対立に惑わされずにその闇を描いたのが「愛と幻想のファシズム」の新しさだったのだろう。労働組合と企業の対立の中で、「我々はどちらにも属さない。」としたクロマニヨンの怖さで、新しさだ。

しかし、現代はそういう時代じゃない。対立はあらゆる意味で力を失った。ラストのゼロの台詞がすごく象徴的。
「原発ってさ、ミスを防ぐという発想じゃダメで、あらゆるミスを想定してそれらにすべて対処できるプログラムを組むらしいんだよね、ありとあらゆるミスの可能性を考えて、どんな場合にも対処できるシステムを二重、三重に作るわけだろ、それはね、すごいストレスだって言ってたよ」
ところが、福島はあのザマだ。優秀な人間が作った優秀なプログラムは、保身や隠匿、利権、身内同士の庇い合いといった、幼稚で社会的な、「大人の事情」でボロボロになる。闇が薄まれば、世界はコントラストを失う。

そうやって、全てがグレーになったのが、現代なのだろう。みんな薄々気付いてる社会。闇が薄くなるというのは、そのまんま、世界を信じられなくなると言うことだ。幼いころ怖かった物置のお化けが、今は全然怖くないのと一緒。怖いということは、信じているということだ。

そんな時代に生まれたのが、「キーチ!!」「キーチVS」なのだと思う。新井英樹は「みんな薄々気付いてる世界」を指して、「思ったままの世の中」と言う。「思ったままの世の中ですよ」なんて台詞を子供に言わせる。「世の中のああいう汚ねえ仕組みなら誰でも知ってる。俺は、世の中、そんな仕組みでできてる当たり前だとか、そんなカラクリ知ってるだとか、誇らしげにぬかす連中が腐るほどいることにヘドが出る」と言い切る。知った風に「野生は美しい」なんて言わず、「金を掴んで、金が全てって価値観をぶっ壊す」と言う。進化を信じているのだ。信じたがっていると言うべきかな。

だから俺は、新井英樹がやっぱりすげー好きなのです。30年前の作品と比較するのもフェアじゃないし、そもそも比較する必要も無いんだけど、進化を信じるという一点で、染谷輝一は鈴原冬二よりも信用できると、キーチ信者の僕は言いたくなるのですよ。新井英樹は解き明かして満足しない。だからどーするってのを、ちゃんと中心に据えてる。キーチの話になってしまうな。信者だからしょうがないけど。愛と幻想のファシズム好きな人は、とりあえず読んでみて欲しいです。トウジの「その後の価値観」が描かれています。愛と幻想のファシズムの子供みたいなもんです。ゼヒゼヒ。

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思ったままの世の中

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この後24時間テレビで演説する。徳光も出てくるよ!

sarustar at 02:50│Comments(3)TrackBack(0)このエントリーをはてなブックマークに追加 mixiチェック Clip to Evernote 本、マンガ、音楽 




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この記事へのコメント

1. Posted by ch.rico   2011年08月24日 03:12
ん、さすが。

内容もさりながら、
相変わらず小気味よい流れが
あるよね文章にね。音楽的なね。
2. Posted by さるすた   2011年08月25日 21:15
>ch.rico
ありーがとー♪(ドファーレミー)
3. Posted by アディダス ジャージ   2013年11月12日 03:35
“You had better explain yourself more fully,” he said. “I really don’t follow.”
アディダス ジャージ http://www.city.hanamaki.iwate.jp/niisho/bbs/bbsdata/adidasshoes.php

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